【講演実績】一人ひとりに向き合って〜埼玉県・生活保護受給者チャレンジ支援事業〜

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「生活保護担当ケースワーカー全国研修会」講演内容

平成25年度「生活保護担当ケースワーカー全国研修会」(厚生労働省 社会・援護局保護課主催)にて、講師を務めさせていただきました。その際の講演内容について、記録として掲載いたします。

 

アスポート教育支援事業の概要

一般社団法人彩の国子ども・若者支援ネットワークは、アスポートの事業の立ち上げと同時に始まった法人で、平成22年7月に立ち上がった団体です。

最初の平成22年度は中学三年生のみが対象でしたが、23年度から中学校の全学年に支援を広げ、25年度からは中学生と高校生への支援ができるようになりました。

現在、支援員は70人です。学習教室は中学生学習教室が17か所、高校生学習教室が7か所、合計24か所となっています。

教育支援事業の2つの柱

私たちアスポートの使命は貧困の連鎖を断つことです。

教育支援の大きな目的としては、まず中学生の「基礎学力の定着」と「高校進学」です。この2つにこれまで3年間継続して取り組んできました。さらに、平成25年度からは新たに高校生支援として「高校中退防止」、「就労意欲を高める取り組み」の2つが加わりました。特に今後は高校に進学した子どもたちをどのような進路に導くかが大きなポイントになります。

これらの目的を果たすために「家庭訪問」と「学習教室」の2つの柱で支援を行なっています。

家庭訪問

まず、支援員は福祉事務所から同意書を徴収した対象世帯の自宅へケースワーカーと同行訪問し、保護者や子どものインテークをします。その後アスポート単独で家庭訪問、電話相談をしながら、家庭状況を把握します。教育支援の立場としては、主に子どもの学校での様子、学習状況などの聞き取りを行います。なかには、子ども自身が生活保護世帯だと知らないケースもあるので、子どもの前では「生活保護世帯の子どもが通う教室」という説明は避けています。

保護者や子どもとのコミュニケーションを通じ、子どもの課題やニーズを把握しながら、一人ひとりに適した支援を検討します。信頼関係が築けてくると、学習教室や季節ごとのイベントへのお誘いにも積極的な関心を示してくれるようになります。

よくケースワーカーに「家庭訪問だけでなく、勉強の面倒も見るのですか?大変ですね」と言われます。しかし、私としては家庭訪問があってこその学習教室だと思っています。各世帯の自宅を訪問し、家庭の雰囲気を感じながら、子どもの成育歴や学校での様子、家庭での様子を把握することで、学習教室ではどのような学習支援をするべきかを検討することができるからです。

学習教室

学習教室は、わからないことを「わからない」と言える教室づくりを目指しています。わからないことを質問するのはとても勇気のいることです。勉強に苦手意識をもっていても、一問でも多く問題を解いて帰ってほしい、そんな思いで子どもたちと接しています。

教室では、一人ひとりの力に合わせた学習支援をするため、ほぼマンツーマンで対応できるよう、大学生や元教師にボランティアとして協力していただいています。

学習内容としては、受験生については高校入試の対策を、その他の学年については苦手科目の勉強、授業の予習復習、定期試験対策等を行います。支援員の手づくりの教材は子どもたちにはとても好評です。

会場は、特別養護老人ホームをお借りしていますので、施設の夏祭りのお手伝い等のイベントを通じ、入居者との折々のふれあいもあります。

就労意欲を高める支援

今年度から新たに始まった就労意欲を高める支援として、現在企画しているのが、夏休み期間を利用した合宿と就労体験です。

中学生は、2泊3日の就労体験合宿で、中日(なかび)は、ブルーベリー摘みや夏野菜の収穫ができる体験の機会をつくりました。高校生は、実際に中学生のときに学習教室で学んだ特別養護老人ホームで、今度は働く側として、その特養ホームに戻るというかたちで、10日間の就労体験を行います。

夏休みは学校以外の場所で学んだり遊んだりできる貴重な時期ですので、このようなイベントに参加することで、少しでも実りのある夏休みを過ごしてほしいと思っています。

社会的なつながりで子どもを支える

アスポートの運営は、各関係機関のご協力がなければ成立しません。主に、対象者とつながるために福祉事務所との連携が要となります。ケースワーカーと世帯の様子についての情報共有、学習教室での子どもの様子について定期的な報告を通じて、世帯状況についてお互いに把握できるよう勤めています。

また、特に協議が必要なケースについては、世帯の同意を得たうえで、学校や教育センター、児童相談所などのケースカンファレンスにも同席しています。私たちは民間団体ですから、なかなかそのような場に出席することはできませんが、例えば、不登校の子どもでもアスポートとの接点が強いケースについては、有効な働きかけができると思います。

また、「教育と福祉の連携」は大きな課題ではありますが、今年度から埼玉県の公立高校と連携がとれるようになりました。少しずつではありますが協力体制を構築している段階です。

このように、家庭の事情などで、どうがんばっても落ちこぼれてしまう子どもたちがたくさんいる中で、社会的なつながりによって、もう一つのセーフティーネットとしてより機能していくことが望まれます。

平成24年度の実績

埼玉県全域(さいたま市を除く)のうち、生活保護受給世帯の中学生は2,300人、そのうち半数の1,301人について訪問支援を開始することができました。さらに、その半数の670人の子どもたちが学習教室に参加してくれました。学習教室に通った中学三年生331人のうち、高校進学率は97%となり、一般世帯の進学率の水準まで辿り着くことができました。事業開始前の進学率は86.9%でしたので、10ポイント近くの増加です。

また、子どもたちの学びを支えるボランティアは、埼玉大学、大東文化大学をはじめとする45の大学にご協力いただいています。ボランティア登録者数は学習教室に参加する子どもの数を大きく上回る709人となっています。

このように、学習環境を整え、一人ひとりに寄り添った支援をすることで、子どもたちの飛躍的な成長が手に取るように実感できます。

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